今回はボルツマンの原理(原理以外にも公式や関係式とも言われている)について説明していきます。
ボルツマンの原理とは一言で言うと統計力学におけるエントロピーの定義式です。
この式を追うことでエントロピーの本質が見えてきます。
統計力学ではかなり重要な式で、オーストリアにあるボルツマンの墓石にはこの式が掘られているそうです。(完全に余談です)
ボルツマンの原理とは
もう一度書きますが、ボルツマンの原理とは統計力学におけるエントロピーの定義式です。
ボルツマンの原理
$$S = k_B \log W $$
$$(k_B:ボルツマン定数 ,W:状態数)$$
導出
二つの条件
相加性
エントロピーを統計力学において定義するにあたり、二つ条件があります。
まず一つ目。
熱力学ではエントロピーには相加性がありました。
相加性
気体の入った二つの容器A,Bを考える。それぞれのエントロピーを$S_A,S_B$とすると二つの容器を混ぜた時、$S_A+S_B$がなりたつ。
この相加性を満たすことが条件の一つ目です。
状態数の関数
次に二つ目。
熱力学第二法則を思い出してください。それはエントロピー 増大の法則とも言われています。
図のように片方に気体分子を閉じ込めた容器を考えてください。この容器の仕切りを外すと、容器の分子は図のように反対側にも当然ながら移っていきますね。
これは当然、不可逆過程なのでエントロピーは大きくなっています。
この時、気体分子の微視的状態の数(分子が散っている状態の場合の数)は容器の体積が増えている分、大きくなっています。
エントロピーが増え、状態数も増えているということはこの二つに何らかの関係がありそうですね。
さて、先ほどの一つ目の条件と同じ二つの容器を考えます。
それぞれの容器の気体分子が満たす微視的状態の数(場合の数)を$W_A,W_B$とすると、二つの容器を混ぜた時、合計の状態数は$W_A \times W_B$となります。
これが二つ目の条件です。この二つの条件をまとめます。
エントロピーを定義する際の条件
エントロピーは状態数と関係があり、容器を組み合わせるとエントロピーは足算となり、状態数は掛け算となる。
対数関数の導入
二つのものを合わせた時、足算やら掛け算やら何とも気持ち悪い感じがします。
この気持ち悪さを消す救世主こそ対数関数です。
対数を用いることでエントロピーは
$$S = k_B \log W $$
と定義することができます。$k_B$はボルツマン定数と呼ばれるもので、つじつま合わせのための定数なのであまり気にする必要はないでしょう。
この式を用いると、二つの容器のエントロピーは
$$S_A=k_B \log W_A$$
$$S_B=k_B \log W_B$$
$$\therefore S_A+S_B=k_B \log (W_A \times W_B)$$
となり、先ほどの条件も満たしています。
以上がボルツマンの原理の作り方でした。
エントロピーの本質
皆さん、エントロピーとはどんな量なのかわかりましたか。
エントロピーは乱雑さを表す量と僕は捉えています。
分子がとる状態の数の対数をとった物ですからね。
最後に
余談
ボルツマンの原理の呼び名はこれ以外にも、〜の関係式とか〜の公式とかあって、定まらないモノかなとか思いますね。
こうゆーのって誰が決めているか気になりますね。ボルツマンさんがこれって言ってれば決まってたのかもしれませんね。
参考文献
・EMANの物理学 エントロピーの正体
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