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【院試講座③】物理学の研究分野【2大研究領域編】

院試講座とは

「物理学生のために、研究室決めの手助けとなる情報を届ける講座」
もちろん、物理学科生でなくても参考になる内容はあります

第一回となる今回は、物理学の主な研究分野についてざっくりと解説していきます。

物理学研究の全体像

物理の異分野との融合分野については下の記事で紹介しています↓↓↓↓

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物理学生の生の声を届けるため、主観的な要素を多く入れるようにしました。
分野によって研究室の色も異なるので、参考にしてください。

文章が冗長になるので、これからは「だである調」にしますがお気になさらず。

目次

物理学の2大研究分野①「素・核・宇宙」

物理学研究の全体像

上の画像が物理学の研究分野である。
中でも大きいのが「素・核・宇宙」と「物性」。

院試の難易度はこんな感じ。

素粒子物理学

KEK公式HPより引用

素粒子物理学とは、あらゆる物質の最小構成要素である素粒子と、素粒子の間に働く力の本質を研究する学問

東大HPより引用
「素粒子物理学」の主な研究内容超ひも理論、場の量子論(理論)
高エネルギー物理(実験)
「素粒子物理学」に近い分野原子核物理学、宇宙物理学
「素粒子物理学」に向いている人・「素粒子」に興味のある人
・難問に挑戦したい人(理論)
・大型プロジェクトに関わりたい人(実験)
・結果が出なくても耐え続けられる人
研究分野としての大きさ大
院試難易度理論:超々難
実験:難
有名な研究所東京大学素粒子物理国際研究センター
京都大学基礎物理学研究所

物理と言えば!的な学問。実際、どの大学でも素粒子系の研究室は人気であり、院試での競争は激しい。

素粒子物理の研究室は、「理論」と「実験」に分かれる。

素粒子の「理論」の研究分野には、難解な「超ひも理論」や「場の量子論」などがある。
故に必要とされる学力はかなり高く(精神的に)スーパーハード、「素粒子理論は天才の墓場」と言われることもある。

「実験」は大型加速器などを使うため、研究は個人で進めるのではなく、大型プロジェクトに参加するような形になる
実質的に研究室が加速器施設になる可能性もある。
大型プロジェクトに参加すると、自分で研究を進めている感覚に物足りなさを覚えるかもしれない。

素粒子物理学は、未解決問題がまだまだ多くロマンの溢れる学問であるのは間違いない。

院試難易度は間違いなくトップクラス。大学院卒業後は博士後期に進む人が多いイメージ。

原子核物理学

原子核内部の陽子と中性子は強い相互作用という複雑な力によって、閉じ込められている。この強い相互作用の性質を明らかにし、原子核の構造を解明するのが原子核物理学

東大HPより引用
「原子核物理学」の主な研究内容原子核構造、ハドロン物質、強い相互作用(理論)
原子核構造、核融合、核分裂(実験)
「原子核物理学」に近い分野素粒子物理学、プラズマ工学
「原子核物理学」に向いている人難問に挑戦したい人(理論)
大型プロジェクトに関わりたい人(実験)
基礎的な物理学に興味のある人
研究分野としての大きさ中
院試難易度理論:超難
実験:難
有名な研究所高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所
東京大学原子核科学研究センター

素粒子物理学のなかにくくられることもある「原子核物理学」。

まず「実験」について。研究分野としては素粒子や宇宙物理学ほど大きくないが、研究対象は多い。
故に後述のプラズマ工学など工学との融合分野などとも関連が深く、物理系学科以外でも研究されておりそれらを含めれば、院試での研究室の選択肢はかなり広くなる。
例:東大新領域、東工大融合理工学系

原子核物理学の応用のプラズマ・核融合工学についてはこちらの記事で解説済み。

また院試では素粒子や宇宙ほど人気ではないので、基礎物理を研究したいけど、素粒子や宇宙は僕には厳しいかもという人にはおすすめ

「理論」は素粒子理論ほどではないと思うが、ハード。

宇宙物理学

Wikipedia「30メートル望遠鏡」より引用

宇宙物理学とは,宇宙の様々な場所で起る諸現象を物理学を用いて記述し,我々の住む自然世界に対する理解をより一層深めることを目的とする学問

京大の岩室先生のHPより引用
「宇宙物理学」の主な研究内容ビッグバン理論、暗黒物質(理論)
宇宙線、重力波(実験)
「宇宙物理学」に近い分野素粒子物理学、天文学
「宇宙物理学」に向いている人難問に挑戦したい人(理論)
大型プロジェクトに関わりたい人(実験)
宇宙に興味のある人
研究分野としての大きさ大
院試難易度理論:超難
実験:難
有名な研究所東京大学宇宙線研究所
東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構

宇宙物理の「理論」もハード。しかし、研究分野にはビッグバン理論や暗黒物質などロマンあふれるテーマが揃っている。

暗黒物質の正体の有力候補が未観測の素粒子であったり、宇宙物理学は素粒子物理学と関連が深い。

「実験」は素粒子物理学と同じような環境
大型プロジェクトに参加して大型実験装置を扱う。
そのため、研究室が参加しているプロジェクトによって、研究環境がかなり変わってくる。
研究室によっては海外に行く機会があるかもしれない。

院試の難易度に関して、「理論」は言うまでもないが、「実験」も物性や原子核実験と比べると高い。

物理学の2大研究分野②「物性」

固体物理学

Wikipedia「超伝導」より引用

固体物理学とは、固体のマクロな熱的、磁気的、電気的性質などを、量子力学に基づいたミクロな原理から解明することを目的とした物理学

コトバンク 固体物理学
「固体物理学」の主な研究内容磁性、超伝導、量子スピン
「固体物理学」に近い分野物性基礎論(理論)、材料学
「固体物理学」に向いている人自らの手で実験を進めたい人
実用性のある研究をしたい人
技術革新に貢献したい人
研究分野としての大きさ特大
院試難易度実験:普通
有名な研究所京都大学低温物質科学研究センター
東京大学物性研究所

研究者が最も多い分野「固体物理学」

ひとえに「固体」といっても研究対象の物質は、研究者の数より遥かに多い。
そのためパラメータを変えれば、いろんな研究ができる。
故にいきなりノーベル賞級の発見が生まれやすいのも固体物理学である。

はたから見ると化学に近いように感じるが、中身は物理学。
パッと見の面白さは素粒子物理などに劣るが、固体物理学は知れば知るほど面白いという人をよく見る

どの大学でも固体物理の研究室は多いため、院試での難易度は先述の分野に比べて低め

半導体など固体物理の知識を活かせる場所は多いため、物理学の中でも就職は良い

※本記事での「固体物理学」は実験のみを指しています。「理論」は後述の「物性基礎論」として扱っています。

表面界面物理学

Wikipedia「表面張力」より引用

物質の表面や、異種の物質間の境界である界面では、一様な物質の内部とは違った不可思議な性質が見られます。表面や界面の性質は、私たちの身の回りの半導体や電極材料、パソコンの記憶媒体であるハードディスクといった工業製品にも広く利用されています。

KEKサイトより引用
「表面界面物理学」の主な研究内容ナノ材料
「表面界面物理学」に近い分野固体物理学、材料工学
「表面界面物理学」に向いている人自らの手で実験を進めたい人
実用性のある研究をしたい人
技術革新に貢献したい人
研究分野としての大きさ
院試難易度実験:普通

研究分野としてはそれほど大きくはない「表面界面物理学

表面界面は、化学や材料工学分野でも研究されている。
また表面界面物理学は固体物理と同じくくりにされることもある。

研究の進め方など院生のすることは固体物理学とほとんど変わらない
院試の難易度もそれほど高くはないだろう。

ソフトマター物理学

Wikipedia「ソフトマター」より引用

ソフトマター(Soft matter)とは、高分子液晶コロイドエマルション 例:乳液、乳剤、ゾルなど)、生体膜、生体分子(蛋白質DNAなど)などの柔らかい物質を指す。このソフトマターを扱う物性物理学ソフトマター物理学と呼ぶ。

Wikipedia「ソフトマター
「ソフトマター物理学」の主な研究内容高分子、コロイド
「ソフトマター物理学」に近い分野固体物理学、化学
「ソフトマター物理学」に向いている人自らの手で実験を進めたい人
実用性のある研究をしたい人
技術革新に貢献したい人
研究分野としての大きさ
院試難易度普通

研究の進め方に関して、ソフトマター物理学も固体物理学や表面界面物理学と殆ど変わらない。

ソフトマター物理学の研究室はかなり少ないため、研究室の選択肢が限られる。

物性基礎論

実在のマクロ物理系の物理の基礎的な部分を研究するという、本来の意味の統計力学

東大HP
「物性基礎論」の主な研究内容非平衡統計力学、超伝導
「物性基礎論」に近い分野固体物理学、統計力学
「物性基礎論」に向いている人基礎的な物理が好きな人
スーパーコンピュータなどの大規模計算に興味がある人
難問に挑戦したい人
研究分野としての大きさ
院試難易度超難
有名な研究所東京工業大学理学院物理学系

物性分野の「理論」、物質のさまざまな性質を数値計算で解析していく学問。

理論であるため、それなりにハードだが、素粒子や宇宙の理論に比べれば敷居は高くないだろう。

それでも素粒子論や宇宙論等と同様に難問が転がっており、解決すれば即ノーベル賞というロマンはある。

数値計算の際にプログラミングを使うわけだが、それを武器に就職はSEになる人も聞く。
就職は実験に比べて不利ではあるが、素粒子理論よりはいいのかもしれない。

まとめ

主観性を抜きにして、院試の難易度、進路の幅などを考慮すると、「実験系」という結論に至る

しかし、大学院は興味のある分野に進むのが一番良い。

物理学には今回紹介した分野以外にも多様な分野が存在する。
そちらも一考する価値はあるので、ぜひ下の記事を見てほしい。

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この記事を書いた人

とある国立大の大学院生。高専から編入学、そして外部院試を経験しています。
備忘録も兼ねて、ブログを運営中。
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